お預かり時の写真

桐たんす

金具

作業風景

金具外し

箪笥の金具外し

金具を外していきます。

取っ手の金具外し

引き出しの取っ手の裏側はこんな感じになっています。

これは「割り足」なんて言ったりします。

刺した後に上下に割って金具を折り曲げ、板に打ち付けて止める金具です。

最近の箪笥では使わない割り足ですが、古い箪笥などは良く使われています。

鍵穴金具

上写真の赤矢印の金具はどうやって止まっているかと言うと

たこ足

上写真の赤丸のように、6本の足を折り曲げて打ち付けて止まっています。

正式名称かどうかわかりませんが、私は「タコ足」とか言ったりします。

見ての通りタコの足のような感じです。

引き出し金具外し

引き出しの金具が外し終わりました。

鏡板取り外し

引き違い戸の鏡板を削るため取り外します。

裏に廻り縁で押さえてあることが多いのですが、この引き戸は「はめ殺し」作られていましたので、引き戸自体をばらして鏡板を取りはずします。

鏡板

うまく取り外せました。

横金具外し

箪笥の側面の金具を外していきます。

金具外し

金具が外し終わりました。

古い金具

外した金具は無くさないよう、上写真のようにして保管します。

箪笥の洗い

箪笥の洗い

天気はあまり良くなかったのですが、ほどよく風も吹いていたので乾きもよいように感じました。

箪笥を乾かす

箪笥が洗い終わりましたので、よく乾かします。

修理風景

修理

背板の修理

背板が多数割れていましたので、背板から直していきます。

一度、背板を取りはずした方が、修理しやすそうでしたので、背板を取りはずしていきます。

背板の取り外し

鉄釘で打たれていたので、鉄釘を抜いて、背板を取りはずしていきます。

背板取り外し

背板を取り外しました。

背板の欠け

背板の欠けや割れなどがある部分はカットして、使える部分だけを残していきます。

背板の修理

足りなくなった部分は新材を足します。

背板の厚み

元の背板がノギスで測ると7.17mm

足す材の厚み

新材の厚みを元の背板に合わせます。

ほぼほぼぴったりの厚みに削りました。

この時に厚みをしっかり削っておかないと、後で段差になったものを削るのはとても大変です。

板矧ぎ

割れてバラバラになった部分を接着して一枚の板にするのですが、曲がっていたり隙間があいたりしているとしっかりくっつきません。

手押しで直線を出す

手押しカンナ盤に通して、接着する面をしっかり直線を出します。

接地面

直線を出したものどおしをくっつけると、

接地面ピッタリ

どこを繋げたのかわからにようになります。

背板圧着

ボンドを入れてハタガネで圧着させます。

両サイドから強く圧着すると、ボンドを入れた板と板が上に反ってくるので、楔(くさび)を入れて浮かないようにします。

側板割れ直し

箪笥の側面の側板の割れも多数ございますので、それらを埋め木にて直していきます。

埋め木修理

埋める木の幅に合わせて溝を掘ります。

埋め木修理

割れた箇所が段差になっていたので、木釘を打って押えます。

木殺し

 

 

埋める木は、少し大き目(といっても0.5mmほど)なので、玄翁のでグッと抑えながら上に引いていきます。

桐は柔らかいので、少し細くなります。

これを「木殺し」なんて言ったりします。

埋め木

ボンドを入れ、玄翁で叩いて埋め木しました。

木材水分で膨らむ

埋め木した後、濡れたウエスで湿らします。

木殺しでつぶした分が水分を含んで元の大きさに戻ろうとするのを利用した方法です。

よく、「なんでこんなぴったりに木を埋められるの?」なんて言われたりしますが、こういう方法でやっているからです。

桐の柔らかさを利用した良くできた方法です。

逆に、欅などの硬い広葉樹などでは、この方法は使えません。

硬いので木殺ししても木がつぶれません、つぶれないので戻ることもありません。

硬い木ほど、加工精度が求められると思います。

もちろん、柔らかい木には木の難しさもあります。

埋め木

箪笥の側板の割れなどすべて直していきます。

棚の割れ

箪笥の一番下の棚も割れていたので、埋め木します。

 

埋め木

埋め木

綺麗に埋め木できたと思います。

補強

赤矢印の部分が何もないので補強したいと思います。

 

手押しカンナ

補強に使う材を手押しカンナ盤にかけ真っすぐにします。

この機械に通すと材の平面を取ることができます。

手鉋でも出来ますが、材の状態ならこの機械を使います。

手道具の刃物はずっと切れる状態ではありません。

削れば次第に切れなくなります、なので大量に削る場合は機械を使う方が利にかなっています。

どのみち最後の仕上げや微調整では手鉋を使いうことになります。

手鉋しかないと削っては研いでの繰り返しで1日の大半を研いでいる感じになります。

大雑把に大量に削る場合は、機械を使い、仕上げの最後の方で精度を出したい時などは薄削りできる鉋などを使います。

補強

上写真のように補強します。

背板のみですと薄いので、引っかかったりして破損しやすくなるので、このように補強します。

引き出し修理

引き出しの割れなどを直していきます。

もちろん割れている所は直すのですが、それ以上に大事なことがあります。

木は伸びたり縮んだりしながら、最終的には1%ぐらい縮んでいきます。

板の縮み

上写真のように赤矢印の方向に縮んでいきます。

引き出し幅

この引き出しの幅を測ってみると「1140mm」ほどあります。

1140mmの1%が11.4mm

なので、この板は1cm1.4mmほど縮んでいる可能性があります。

割れ幅

割れている所の隙間を測ってみると4mmほどの隙間があります。

板の縮み

 

板の縮む力に引っ張られて、引き出しの横板が割れてしまっています。

引き出しの両サイドがこのようになっています。

割れが4mmで左右が3mmぐらい引っ張られているので合計10mmぐらい板が縮んでいることがわかります。

やはり1%ぐらい縮んでいることが確認できます。

上写真のように引っ張られているということは、ストレスがかかっているということになります。

なので引き出し左右のストレスを解放してあげます。

板の縮み修理

引っ張られている箇所を上写真のように切り取って、ストレスを解放しました。

割れを直すのはもちろん、木の縮みなどを考慮して無駄に力が掛かっている箇所を取り除いてあげることが修理で大事なことだと私は考えています。

目に見えている割れだけを修理して、こういったストレスが掛かっている部分を直さないと、かならずその力はどこかに影響してきますので、せっかく直してもまた割れてしまう可能性が高まります。

もちろん、木ですから他の原因で割れることもありますが、こういった可能性の高い箇所は直しておくに越したことはありません。

割れ、埋め木

割れている箇所を埋め木などで直していきます。

引き出し修理

引き出しの左右のストレスを解放したのち、ストレスのかからない状態で新材で取り付けます。

ほどよく縮んだ板なので、これ以上の縮みはあまり考えなくても良いと思います。

新材は、数センチなので縮みの影響はほぼ出ません。

これで末永くまた使用することが出来ると思います。

インク染み

上写真、赤丸の辺りにインクの染みのようなものがありましたので、削ってとります。

インク染み

インクの染みは深く染み込んでしまうと取れないこともあるのですが、これはなんとかなりそうです。

染み削り

綺麗に削りとることができました。

 

空気穴

取り外した背板を、取り付けるのですが、赤丸の部分が少し欠き取ってある部分があります。

これは、欠けた訳ではなく、引き出しを入れた時にこの部分から空気が抜けるようになっています。

つまり「空気穴」の役割をしています。

空気穴構造

構造を精密に作り、空気の漏れを極力少なくして、その空気を後ろの空気穴から逃がすことで、引き出しの上下の引き出しを押し出したりします。

もし、空気穴がなかったら空気の逃げ場がなくなるので引き出しはまったく入らなくなるでしょう。

注射器の先端の針に穴がないのに押そうとしてもまったく押せないのと同じです。

箪笥の中に空気穴がないけど、引き出しを入れたい場合は背板に穴などをあけて空気の逃げ場を作らなければならなくなり、その場合、背板が穴だらけで見栄えは悪いし、ホコリや虫なども入ってきます。

穴が開いていたら、せっかくの気密性も意味をもたなくなってしまいます。

なので、桐箪笥の構造はこのようによく考えられて作られています。

引き違い戸

引き違い戸を元通りにしていきます。

引き戸装飾

引き違い戸の内側が段に加工されていて組んでしまってからでは削れなくなるので、この状態で削っておきます。

際鉋

際鉋(きわがんな)と呼ばれる鉋で削ります。

際鉋

鉋刃はこのようになっています。

際鉋

このように綺麗に削れます。

際の削り

段の部分が削れました。

 

鉋の研ぎ

箪笥を削っていくのですが、鉋の刃を研ぎます。

鉋掛け

鉋掛け

表面を削っていくと綺麗な木肌が出てきます。

箪笥削り

一通り削り終わりました。

引き違い戸接合

バラバラにした引き違い戸をボンドをつけ圧着しましたが、それだけでは強度はとても弱いです。

普通は木釘などを打ったりして強度を出しますが、今回は「かんざし」で強度を出します。

ボンドでつけただけでは衝撃などに弱く、手で持って床に落とすとバラバラになってしまったりします。

かんざし加工

四隅を上写真のように削りとって、この隙間にあった板を入れます。

かんざし

女性の髪に挿すかんざしのようだから「かんざし」と呼ばれているのかもしれませんね。

こうすることで、ただボンドでつけただけよりは遥かに強度が出ます。

落としたぐらいでは簡単にバラバラにならなくなります。

かんざし

余分な部分を鋸で落とします。

額縁などでよく使われる工法です。

色違いにすることで、見た目のデザインにもなりますが、今回は目立つ部分ではないので目立たないタモを使用しました。

普通は引き違い戸の材より硬い木を使います。

なので桐よりも硬いタモを使いました。

蜜蝋塗り

蜜蝋を塗っていきます。

塗り方は人それぞれあるのですが、蜜蝋は刷毛や布ので塗るよりスポンジに含ませると塗りやすいです。

蜜蝋塗り

塗ったら乾いたウエスで余分な蜜蝋をふき取っていきます。

 

蜜蝋塗り

箪笥本体にも塗っていきます。

金具の磨き

金具はそのまま使用ですが、横金具は少し汚れが目立ったので磨きました。

コンパウンドをつけ、上の写真のように磨きます。

このような作業をバフ磨きとか、バフ仕上げなんて言ったりします。

金具磨き

綺麗な真鍮の色が出てきました。

金具つけ

金具をつけていきます。

金具つけ

上写真のように割り足の先端を曲げ、打ちつけます。

金具つけ

これが「割り足」と呼ばれています。

現在の引き出しの取っ手とかは、割り足の代わりにネジ式がほとんどになっています。

金具取付け

金具が付け終わりました。

箪笥の蝋塗り

引き出しの開け閉めがスムースになるよう「イボタ蝋」を塗ります。

イボタ蝋

引き違い戸のレールにあたる部分にも塗ります。

桐箪笥の修理・蜜蝋仕上げ、完成写真

桐箪笥蜜蝋仕上げ

桐箪笥蜜蝋仕上げ

桐箪笥蜜蝋仕上げ

 

桐箪笥蜜蝋仕上げ

桐箪笥蜜蝋仕上げ

桐箪笥鍵

箪笥の鍵

 

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