衣装箱(衣装ケース) お預かり時の写真
修理プラン
底部分に4、5箇所割れがあります。
割れの修理方法として、上画像のようにした木を割れている所に埋めます。
それを下側からも入れます。
出っ張っと所はボンドが乾いたら削ります。
その後、
上画像の蝶ネクタイのような木を埋めます。
これを「契り(ちぎり)」と言います。
一度亀裂が入るとどんどん進行してしまうので、それ以上割れないようにするためです。
丁番は取り替えた方がよさそうですね。
赤丸辺りを拡大します。
蓋が結構ズレてしまっています。
左側は合っているので、純粋にこちら側の上下の木の歪みが出てしまっています。
削ってしますと、元々があまり厚みのある材ではないので、削るのは厳しいと思われます。
衣装箱の蓋を開けた写真で、赤矢印の補強材が反ってしまっています。
本当は、蓋の天板とぴったりとついた状態が理想ですが、このままでも問題はないかと思います。
この隙間を付けようとすると蓋がたわんでしまいます。
これを直そうとすると、天板を一度ばらさないといけません。
バラす過程で、破損が出る可能性もあり、またその破損を直しながらといった感じの修理になります。
金具はおそらく真鍮製だと思うので、磨き粉で磨くと綺麗になると思いますので、そのようにしたいと考えています。
赤四角の部分を拡大します。
蓋の角の部分がズレてしまっています。
目立たなくなるよう、少しだけ削って丸みを持たせ、ズレを目立たなくしようと考えています。
衣装箱の後ろ側が、節が取れた穴があります。
埋め木、もしくはパテを使った修理をしようと考えています。
全体の修理が終わりましたら、現在の塗膜を剥いで、オイルで仕上げようと考えています。
金具の外し
金具の取り付け位置などがわからなくならないように写真に残します。
正面
側面
背面
釘を打った後があるので大体わかるのですが、微妙に形の違う金具があったりすると、「あれ?どこだっけ?」とならいようにします。
金具を一つ一つ丁寧に外していきます。
欠けている所も金具でどうにか持っていた感じで、金具を外したら、ポロっと取れました。
洗った後、割れ欠けなどは直していきます。
すべての金具が外し終わりました。
洗い
衣装箱を洗い、よく乾かします。
古い塗膜を大雑把に落とし、直すべき箇所を明確にします。
この後修理していきます。
所どころ割れている箇所をボンドを入れ圧着します。
蟻組で作られた衣装箱の箱部分、これも天秤差し(てんびんざし)と呼ばれる組手です。
しかし、年月の経過により、糊が切れてしまって隙間が空いてしまっている所がちらほら。
こういう組手で作られていなければとっくの昔に箱の形は保てなかったとおもいます。
隙間に糊を入れ圧着致します。
この衣装箱は樟で作られているので、特有の匂いがします。
なるほどこれが、「樟脳の香り」というやつなんだと納得してしまいました。
長年この仕事に携わっていますが、クスノキはあまり手に取ったことがありませんでしたので、貴重な体験をさせて頂きありがたいことです。
楠(くすのき)の葉や煙は、防虫効果や鎮痛剤として用いられ「薬の木」からクスノキとされた説もあるそうです。
楠の木材は、現在ちょっとした板材でも〇万円する高級木材です。
割れが進行しないように、まずは「ちぎり」を埋め木していきます。
ちぎりは、埋める対象の木よりも硬い木を使うのが基本です。
クスノキは、欅などに比べると柔らかい部類ですが、桐や杉、桧などに比べると硬い部類です。
今回は黒檀(こくたん)で、ちぎりを作りました。
黒檀は、仏壇などに使用される木材です。
比重も重く、水に入れると沈みます。
黒い色が、ちぎりとして良いアクセントになるかと思います。
箱の裏側にもちぎりを入れます。
楠材を使って割れた所に埋め木していきます。
節だった箇所が取れて穴が開いていましたので、埋め木していきます。
鑿で埋め木する形を整えます。
埋め木してクランプでガッチリ圧着させます。
蓋が収まる部分の縁の欠けを直していきます。
圧着させ乾いたら、元の形に成形していきます。
サンディング(磨き)
衣装箱の表面を塗装が綺麗にのるように下地調整いたします。
サンドペーパー100番ですでに磨いてあるので、150番、180番、240番と磨いていきます。
塗装が綺麗に出来るかどうかは8割がたこの磨きで決まると言ってもいいかもしれません。
サンディング終了写真
着色
オイルフィニッシュの「マホガニ」を塗布していきます。
オイルフィニッシュは、木に染み込ませて、木が吸いきれない塗料を拭きあげて仕上げます。
上写真では、濃く見えますが拭き取ると木目がしっかり見える仕上げです。
一通り塗れたら、しばらく放置します。
余ったオイルをウエスで擦り込むように拭いていきます。
拭き取ったら、この状態で1日乾燥させます。
金具を仮置きしてみました。
金具を付けると、衣装箱が一段と引き締まると思います。
クリアオイルの上塗り
衣装箱の中にクリアオイルを塗ります。
オイルが木に染み込んで割れなどを防いでくれる効果が期待できます。
クリアオイルの粘度は高いのですが、拭き取って乾いたらベトつきはなくなりサラサラになります。
衣装箱の中が塗り終わりました。
マホガニのオイルで塗った上に、クリアオイルを塗ります。
30分ほどしたらふき取ります。
余ったオイルを拭きとります。
中も拭き取りました。
拭き取りが終わりましたので、1日以上乾燥させます。
オイルが乾いたので金具を取り付けていきます。
金具がつくと引き締まりますね。
とてもいい雰囲気だと思います。
衣装箱の修理・再生。完了写真
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