家具の塗装について
伝統的な桐箪笥の仕上げは、「トノコ仕上げ」「時代仕上げ」になります。
それ以外の桐箪笥のリメイクや古い家具の塗り直し、または製作依頼された場合の着色、塗膜の場合について。
- 好みの色にしたい
- 元々の木の風味を生かしたい
- テカテカした仕上げにしたくない
- お手入れが簡単になるように水につよい仕上げにしたい
- 多少のメンテナンスは自分でするから木の風合いを出したい
これらによって、使う塗料や仕上げは変わってきます。
清水桐工房では、以下の仕上げ方法があります。
桐箪笥の伝統的な仕上げ「トノコ仕上げ」「時代仕上げ」
好きな色で着色して高級感を出したい「オイル仕上げ(着色ステイン、ウレタン仕上げ)」
安全な塗料で、木の呼吸を妨げず柔らかい仕上げになる「オイルフィニッシュ仕上げ」
桐箪笥の仕上げ「トノコ仕上げ」と「時代仕上げ」
天然の砥の粉をヤシャの実を煮出した液を混ぜて塗る仕上げです。
砥の粉には、「白トノコ」「黄色トノコ」「赤トノコ」がありますが、一般的には黄色トノコを使用します。
清水桐工房でも「黄色砥の粉」を使用してトノコ仕上げを行います。
桐箪笥と言ったらこの仕上げと言うくらいメジャーな仕上げです。
上写真が「トノコ仕上げ」になります、とても品のある仕上げです。
トノコを塗る前に、トノコの液が良く吸い込み落ちにくくするたに箪笥を温めます。
トノコを塗った後は、表面をカルナバ蝋という蝋を塗り表面に光沢を出します。
ただし、天然の砥の粉で表面保護は蝋で仕上げてあるため、水にめっぽう弱いです。
ただし、現在の塗料ではだせない品のある仕上がりになります。
「手汗」「腕汗」などでも染みになります。
なので、桐箪笥は油単(ゆたん)という箪笥カバーもあります。
天然の砥の粉で表面が蝋で仕上げてあるため、仕上げた面を乾いた布でゴシゴシ、力いっぱい擦ると色が剥げることもあります。
仕上げ面のお手入れなどは、柔らかい布などで、やわらかく拭く必要があります。
トノコ仕上げの場合、引き取りは雨でも、これから修理するので良いのですが、雨の日の納品の場合は注意が必要です。
雨の日の納品については下記リンクをご確認ください。
弁柄(べんがら)仕上げ
日本から古くから伝わる自然のものを使用した仕上げになります。
和のテイストで仕上げたい場合などは弁柄仕上げをお勧め致します。
桐箪笥、水屋箪笥、日本家具などの和を強調できる仕上げです。
弁柄を柿渋で溶いて塗り、色を濃くする場合は乾いてから塗り重ねることで濃くなります。
仕上げには、えごまの油をひいて仕上げます。
えごま油は、色止め、手垢防止、艶出しの効果があります。
弁柄とは?
土中の鉄が酸化した酸化第二鉄を主成分とした自然顔料です。
柿渋は鉄に反応して固まる性質があるので、色を定着させることが出来ます。
耐光性が強く、時間が経っても変色しにくいので外壁の塗装などにも利用されていました。
インド・ベンガル地方が産地のためこの名がついたそうです。
日本の伝統的塗装材料です。
左から
赤弁柄、茶弁柄、黒弁柄、の一度塗りです。
乾いてから塗り重ねることで、色を濃くすることも出来ます。
※弁柄の色の種類は上記写真の3種類となります。
上の写真が弁柄二度塗りになります。
上写真が弁柄と柿渋を使った水屋箪笥の仕上げになります。
上写真の水屋箪笥の修理風景は下記リンクで見れます。
柿渋仕上げ
通常、弁柄で色付けして柿渋で色止めの効果があります。
柿渋だけの仕上げも出来ます。
柿渋のみで仕上げるこんな感じの色味になります。
柿渋の面白いのは、時間の経過とともに段々色が濃くなっていきます。
柿渋で塗った後、1週間ぐらいしてから「えごま油」で仕上げます。
オイル仕上げ(着色オイルステイン、ウレタン仕上げ)
オイルステインとオイルフィニッシュの違いは、オイルステインは着色を目的とした塗料です。
なので、着色した後は「ニス」や「ウレタン」などの上塗りが必要になります。
オイルスインで着色後にウレタンの事例として、下記リンクを参照して下さい。
「ケヤキ」、「メープル」、「チーク」、「ウォルナット」、「マホガニ」、「ワインレッド」
※着色は、材種により色味が変わることがあります。
- 着色した後、ウレタンで塗膜を作るのでキズがつきにくく、水吹きが出来るのでお手入れが簡単です。
- コップなどの輪染みなどが付きにくい。
- 着色した木肌が空気に触れないので、反りや曲がりなどが起こりにくくなります。
- 着色しただけでは乾いた色味ですが、ウレタンを吹くことで、木が濡れ色になり高級感が出ます。
※熱い鍋やヤカンを直接置くと表面のウレタンが溶けて白濁したりすることがあります。(鍋敷き、コースターなどをご使用ください)
リメイクや製作したものを長い間、初期の状態を長く維持できます。
【ウレタン塗装について】
ウレタン塗装は、それ自体で着色するものではありません。
修理した、または製作した家具を透明な膜で保護するため。
厚い塗膜を作り、色褪せや水分などから守ります。
無垢の家具でしたら、厚い塗膜で覆うので木が呼吸できません。
しかし、木の呼吸を止めることで木の反りや割れなどが起きにくいです。
水をこぼしても塗膜で守られているのでふき取りも簡単で後も残りません。
清水桐工房で使用しているウレタンはウレタン二液性八分艶消し
全体を10とするなら、その8割の艶をなくして2分だけ艶が出るウレタンです。
「下塗り」、「中塗り」、「仕上げ塗り」で仕上げていきます。
テカテカしないで、落ち着いた高級感の出るウレタンです。
ウレタンで上塗りされた家具を、ご自身で使用されていく中で、傷などをつけてしまった場合は自分で直すことは出来ませんのでプロに頼む必要があります。
オイルステインを塗布しただけ |
オイルステインで着色後ウレタン吹き |
ウレタンを吹くことで、濡れ色になり発色が良くなります。
オイルステインで着色して蜜蝋仕上げも出来ますのでご覧ください。
↓画像クリックで色見本ページ
オイルフィニッシュ仕上げ
「オイル仕上げ」と「オイルフィニッシュ仕上げ」は言葉は似ていますが違います。
オイルフィニッシュ仕上げは、これのみで完結する塗料です。
ニスやウレタンなどの上塗りを必要としません。
オイルフィニッシュとオイルステインの違いは、オイルフィニッシュは木の中に浸透して中から硬化して着色や撥水効果のある成分が含まれています。
撥水効果のある成分が含まれているため、ウレタンなどの上塗りができません。
清水桐工房で使用するオイルフィニッシュの特徴
- 環境に優しい自然塗料(植物油ベース)は木部に深く浸透して木の呼吸を妨げない。
- 塗装することで、木の反り、曲がり、などが軽減されます。
- 優れた撥水性・防汚性があります。
- 浸透性塗料なので木の呼吸を妨げない。
オイルフィニッシュの中では、撥水性が高く色付きも良い塗料です。
半透明を使用しますので、木の持つ自然な美しさが際立ちます。
浸透性塗料ですので、塗装する樹種によって仕上がりの色が異なります。
ウレタン塗装のようにガチガチに塗膜をつくる仕上げよりも、どことなく柔らかい仕上げで広葉樹(ウォルナットやチークなどの銘木)のような高級感のある色合いに仕上がります。
とても桐と相性の良いオイルフィニッシュです。
木の呼吸を妨げないので、時間経過を経て色味の変化なども楽しめる仕上げになります。
キズがついたり、撥水効果が悪くなったら、使用したオイルを使ってご自身でお手入れが出来ます。
上写真は、オイルフィニッシュ「マホガニ」で仕上げた桐箪笥です。
上品な色味で木目が際立ちます。
洋風な仕上げにも見えますし、和な感じもする仕上げです。
この写真のテイストな感じで、各種色がありますので、詳しくは色見本でご確認ください。
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